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farmers KITAGAWA 北川敏匡さん

徹底した品質管理で質の高いイチゴを 儲かる専業農家を目指して

製薬会社の営業マンから専業農家に転身

 「目指すのは、美味しさに加えてちょっと面白味がある、ダークホース的なイチゴです(笑)」と冗談交じりに話すのは、三重県伊賀市石川で農業を営む「farmers KITAGAWA(ファーマーズ キタガワ)」の北川敏匡さん(38)。会社員から専業農家に転身して今年で10年目になる。

 伊賀市石川で生まれ育った北川さん。同志社大学工学部に進み、卒業後は大手製薬会社に就職。営業マンとして奈良で働くも、次第に自身のしたい仕事と現実の仕事にギャップを感じるようになった。帰省のたびに、周辺の農業放棄地が増加していくことや、兼業農家を営む父親の体力の低下が気になっていた。その中で「高齢化が進む農業も経営戦略によっては、若者にとって魅力ある、儲かる職業になるかもしれない」と思うようになり、思いきって3年半勤めた会社を辞めて、専業農家の道に飛びこんだ。

 

 農業を始めるにあたっては、長野、伊賀、久居の3軒の農業法人で実践的な研修を積んだ。さらに三重県農業大学校で1年間、農業経営や栽培方法などを学んだ。約2年間の準備期間を経て、2013年4月、実家で所有する農地を含め、耕地面積約2.5haの農園をスタートした。

三重県伊賀市石川にある北川さんのハウス

ブランディングと事業計画で利益アップ 職人と経営者のバランスを大切に

 所有する農園は山間にあって、大規模な農業には向いていない。さらにこの地域は、伊賀盆地の中でもとりわけ昼夜の寒暖差が激しいところで、決して恵まれた場所ではなかった。北川さんが選んだのは、土地の特性が活かせる、量産ではなく品質に重点をおいたハウス栽培だ。主な栽培作物はイチゴとトマト。季節で出荷時期が入れ替わるので事業計画が組みやすく、利益も年間を通して得られるのが利点だ。

 利益アップのために、もう一つ力を入れているのがブランド育成。付加価値が付く高品質な作物の栽培だ。栽培管理に重点をおき、光合成の促進に必要な水や温度、湿度、二酸化炭素の量をそれぞれ数値化し、制御するシステムを導入。また、肥料の選定や配合にこだわった土づくりにも力を入れた。

 

 「同じ品種でも、立地条件や気候、栽培方法で、全く違った味になります。質の良いものを作るためには、一つ一つポイントを押さえて丁寧な仕事を行っていくことが大切。私は経営者であるとともに、こだわりを持つ職人でありたい。二つのバランスをうまくとることが、お客様に支持していただけるブランド力につながると考えています」

 

 出荷商品には必ず、農園のロゴが入った自作のラベルを貼る。「ラベルに込めたのは、自分が育てた味を発信したいという思いと、責任感。専業農家である以上、お客様に買ってよかったと思っていただける商品を作らなければいけないと思っています」と真剣なまなざしで語る。

手作業で丁寧にイチゴの摘芯をおこなう北川さん

地元の多くの飲食店から好評を得る商品に 全国展開する有名洋菓子店のタルトにも起用

北川さんが栽培している「よつぼし」。「よつぼし」は2017年に品種登録された「種子繁殖型」のイチゴ

 主力商品の一つであるイチゴ。北川さんが選んだ品種は「よつぼし」。決めた理由は「食べた時に純粋に美味しかったこと。懐かしいイチゴの味、イチゴ本来の味がすると思ったから」だそう。「よつぼしは味も見た目もオーソドックスですが、管理の仕方で誰かにあげたくなるような美味しいイチゴに育ちます。甘味と酸味のバランスが良いので、ケーキやタルトに使ってもイチゴの味が引き立つ。それが魅力です」と笑顔を見せる。

 

 職人としての顔を持つ一方、市内の飲食店にサンプルを持ち込んで直談判するなど、経営者の顔もしっかり持っている。販路開拓の努力が実り、多くの飲食店に味を気に入ってもらいSNSで発信してもらえるようになった。評判が評判を呼び、今では農産物直売所で午前中に売り切れる人気商品となった。また、昨年は全国展開するフルーツタルト専門店「キル フェ ボン」の期間限定タルトに北川さんの「よつぼし」が採用され、全国デビューを果たした。

 

 「将来は法人化して人材育成にも力を入れたい。伊賀の魅力発信のためにもイチゴを全国展開したい。実現したいことはまだまだたくさんあります」そう話す若きチャレンジャー。今後の活躍に期待したい。

※「farmers KITAGAWA」のイチゴは伊賀市内では「とれたて市 ひぞっこ」で、1月から5月末まで販売される予定です。

取材日:2021年12月

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