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第41回 伊賀忍者特殊軍団阿修羅

三重大学人文学部 教授 山田 雄司

伊賀流忍者博物館で連日忍者ショーを繰り広げているのが、伊賀忍者特殊軍団阿修羅である。阿修羅は1987年に「浮組」として8人で発足、89年に阿修羅と改名して、伊賀の上野公園内にある忍者屋敷前でパフォーマンスを披露し始めた。2001年に忍者ステージ(現・忍術ひろば)が整備され、本拠地として忍者ショーを行っているが、国内はおろか、台湾・韓国・アメリカ・中国・スペイン・フランス・イタリア・ブラジル・タイ・イギリスなど、世界各国でショーを行い、どこでも大変人気を博している。また、TV、CM、映画、舞台にも数多く出演するなど、日本のトップ、いや世界のトップ忍者軍団と言ってよいだろう。

ロンドンで開催されたジャパン祭りで忍者ショーを披露する阿修羅

ロンドンで開催されたジャパン祭りで忍者ショーを披露する阿修羅

写真は2018年9月30日、ロンドンのトラファルガー広場で開催されたジャパン祭りのメインステージでのショーの模様である。このときは私も同行して忍者について解説を行ったが、阿修羅の忍者ショーは大観衆を魅了し、その後の写真撮影には長い行列ができた。

阿修羅の忍者ショーは他の忍者集団が行っている忍者ショーとは異なり、本物の武器を使っており、このショーを一目見ようと外国からやってくる観光客も少なくない。真剣、鎖鎌、手裏剣、火矢、伊賀組みひもなどを用いたショーは、見ている人を圧倒させるだけでなく、時には笑いで会場を包む。そして、少しでも失敗すれば大事故につながるため、頭領の浮田半蔵さんによる指導の下、メンバーは毎日の厳しい鍛練を欠かさず、ショーの内容も常に進化している。浮田さんは実際に日本刀で指を3本斬り落としてしまったことがあるが、名医のおかげで指がつながることができたという。また、同じ内容をずっと行っているわけではなく、常に新たな技を編み出し、どのように見せたら効果的か、綿密に計算しているのは、さすが一流のパフォーマンス集団である。

伊賀と甲賀は2017年4月、「忍びの里 伊賀・甲賀」として日本遺産に認定され、さまざまな取り組みが行われているが、阿修羅による忍者ショーはその中心で、世界の注目を集め、2019年2月には三重県の「みえの国観光大使」と伊賀市観光大使の委嘱を受けた。しかし、新型コロナウイルスの流行により、忍者博物館は閉館され、忍者ショーは休演となった。阿修羅のメンバーも、残るのか離れるのか、各自の意思に任されることとなったが、昌之助・知之助・未央・虎徹・香織の各メンバーは、いつ再開されるのか不安な中、休演期間中も鍛練を積み重ね、5月30日からのショーの再開につなげた。その間、新たな技を開発したり、子どもたちに応援メッセージを届けたり、結婚式ができない人たちにお祝いの動画を送ったりするなど、ただ忍んでいるだけではなく、常に新たな方策を考えたのは忍者らしいと言えよう。いつ何時、何が起きるかわからない中、忍者で一番重要なのは知力だということは、『軍法侍用集』に記されるところである。

阿修羅の忍者ショーはいつも、九字護身法の「正心」から始まる。どのようなことがあっても動じない不動心がなければ、何事も集中して事を行うことはできない。そして、少しでも気を抜けば、たとえショーであっても大きな事故につながってしまう。戦場なら即死である。新型コロナウイルスで落ち込んだ観光客は、しばらくは元のようには戻らないだろう。忍者の忍は忍耐の忍、堪忍の忍、と言われるが、今こそ忍者の真価が問われていると言っても過言ではない。耐え忍びながらも裏では密かに計画を進める忍者の生き方に学んで、これからも「忍者の聖地 伊賀」を世界に発信し続けてもらいたい。

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