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三重大学大学院の忍者・忍術学で初の博士号を取得 三橋源一さん

忍者研究を現代の地域防災に役立てたい

伊賀忍者がきっかけ 発祥の地伊賀に移住 

 「伊賀に興味を持ったのは、20代半ばに入門した古武術「武神館」の武術の一つ、戸隠流忍法体術が伊賀忍者と関わりがあるというのを知ったからです」と話すのは三重大学大学院「忍者・忍術学」の博士で、防災コンサルタントなどの活動を行う、伊賀市石川在住の三橋源一さん(49)。

 大阪府出身の三橋さんは、鳥取大学や京都大学大学院で作物学や農業経済学などを学んだ。その後出身地に戻り、家業のビル管理などを手がける会社を手伝いながら、休みを利用して農業を行っていた。継続して通っていた「武神館」では、2016年に最高段位の15段を取得。以前から忍者に興味があったこともあり、2018年に三重大学が全国ではじめて大学院修士課程に「忍者・忍術学」コースを導入することを知り、1期生として入学。これを機に伊賀忍者発祥の地である伊賀への移住を決意。農業ができる場所を探していたところ、空き家バンクを通じてこの場所に出会い、移住した。移住後しばらくして敷地内で道場を開き、続いて農業体験や忍術体験ができる民農泊施設「産土武芸道場(うぶすなぶげいどうじょう/現うぶすな)」を開業した。

 「ここは、石川五右衛門塚や山城が近くにあって、忍者や忍術を学ぶ者にとっては、とても魅力的な場所です。自宅の敷地内に畑があるのもすばらしい。自然の巡りが肌で感じられる農業がとても好きですし、昔の人が何百年も繋いできたこの田園風景を見ていると、とても安心できます」と三橋さんは現在の住まいについて話す。

自宅敷地内にある「武神館三橋道場」。伊賀をはじめ、大阪や名古屋から通う門下生もいる。

民農泊施設「うぶすな」の暖炉には、山の整備で切りだした薪を使用。

安政伊賀地震で復興に貢献した伊賀衆の研究で博士号を取得 
研究を地域防災に役立てたい

 三橋さんは「忍者・忍術学」コースの修士号を取得後、地域イノベーション学科の博士課程に進んだ。博士号の論文では、県内の庄屋に残る古文書などを読み解き、江戸時代末期の安政伊賀地震で、伊賀衆(無足人)が被災状況を素早く把握して津藩の藩主に報告。迅速な災害支援・復旧支援に貢献したことなどを明らかにした。さらに、この伊賀衆の対応が、現代の地域防災に役立つ可能性があることを述べた。これらの研究の成果が評価され、2023年12月に同コースで初となる忍者学博士号を取得した。

 三橋さんは伊賀衆の研究のほかにも、忍者の生活術を現代の防災に活かす研究も行っている。2024年3月には、三重大学の学生と三重大学付属小学校の児童や教師などと『暗所対処』の体験を行った。

 「この体験は、地震で停電している時に、物が散乱した屋内から安全に脱出するための模擬体験として実施しました。まずは、忍者の印を結び気持ちを落ち着かせます。暗闇の中、方向感覚、平衡感覚が不安定な状態で歩く際の重心のかけ方や、硝子の破片を踏まないように地面を撫でながら歩く忍者歩きなどを紹介しました。子どもたちは楽しみながら真剣に取り組んでいて、とても好評でしたよ」と三橋さん。今後は地元でもこういった機会を持ちたいと意気込む。

 「江戸時代の伊賀上野の城下町は、先に述べたように、歴とした防災都市と言えると思います。今後はそんな歴史とともに忍者の生活術を活かした様々な防災術を、地元の方をはじめ多くの方にお伝えしていきたいですね」と「忍者・忍術学」の博士ならではの抱負を語った。

 

三重大学大学院 忍者・忍術学の学位記(左)と三重県・三重大学 みえ防災・減災センターが実施しているみえ防災塾「みえのさきもり」認定書(右)等を手に持つ三橋さん。

※三橋さんが営む民農泊施設「うぶすな」の詳細はこちら

取材日:2024年3月

 

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