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色鉛筆画家 長谷川まどかさん

色鉛筆の動物画を一筋に制作 伊賀で作品を描き続けたい

14歳で国内公募デビュー 16歳で海外画壇デビューを果たす

 「色鉛筆との出会いは、物心がつく前でした。外食の待ち時間用のおもちゃとして親に渡されたのが、色鉛筆とお絵かき帳だったんです。それからお絵かきが好きになって、その延長で今もずっと色鉛筆画を描き続けています(笑)」と話すのは、伊賀市在住の色鉛筆画家 長谷川まどか(MADO)さん。(26)

 幼少期からずっと、独学で色鉛筆画を描いていた長谷川さん。画家としてのデビューは、なんと12歳。東京の銀座でよく個展を開いていた親戚が長谷川さんの絵に感心して、「愚図展」(東京交通会館)への出展を勧め、参加したのが12歳だった。中学3年生14歳のときには「第9回国際公募新展」(東京都美術館)で公募努力賞を受賞し、国内公募デビューを果たした。その後、名張桔梗が丘高校(現名張青峰高校)に進学し、美術部に所属。16歳のときには「第28回パリ国際サロン・ドローイング展」に入選。渡仏した際、世界最古の国際公募展「ル・サロン」の名誉会長ジャン・マリ・ザッキ氏に「フランス国内においても動物を専門に描く作家は、珍しく、とても貴重である」と評され、16歳でフランス画壇デビューを果たした。その後、成安造形大学の美術領域を卒業し、伊賀で本格的な作家活動をスタート。その間に、東京や京都を中心とする公募展に多数入選、入賞を果たす。これまで、東京や京都、フランスやイタリアでの展示のほかに、2021年には地元伊賀のギャラリー「ART SPACE IGA (アートスペースいが)」で個展を開催した。

「第9回国際公募新展」(2012年/東京都美術館)で公募努力賞を受賞した「主人を待つ犬」と長谷川まどかさん(14歳)

写真提供:長谷川まどかさん

「第28回パリ国際サロン・ドローイング展」(2014年)で講評を受けた「ル・サロン」名誉会長 ジャン・マリ・ザッキ氏と共に

写真提供:長谷川まどかさん

飼い主だから描けるリアルな表情の動物画 

 長谷川さんの作品は、自宅で飼っている動物を描いたものがほとんど。描かれている表情やしぐさは飼い主だから表現できるリアルなもので、タイトルも「ねこパンチ3秒前」「罪深きワンコ」「どやっ」など、どれもくすっと笑ってしまうネーミングになっている。

 「生まれた時から動物に囲まれて育ったので、動物のいない暮らしは考えられません。下宿せずに片道3時間かけて大学に通っていたのも、飼っている犬や猫と離れたくなかったから」と話す長谷川さん。動物と毎日触れあう中で、描きたい瞬間が頭の中にインプットされていくという。

 作品は水張りと呼ばれる日本画の手法を用いて紙を張ったパネルに、細い線を重ねて描く独自の技法を用いて、かなりの筆圧で描く。F50号(1167×910mm)の大きさでも、早ければ2週間ほどで描き上げる。作品を描き始めたら、食事をとるのを忘れるほど集中するという長谷川さん。「色鉛筆画は油絵と違って修正がほとんどできないので、最初から着地点を決めて描いています。頭の中にある完成形を、線を重ねながら再現していく。例えると、すっぴんからお化粧するように、色が段々とあがってくる感じです(笑)」

長谷川まどか「お坊ちゃま」

長谷川まどか「ふてくされた犬」

故ワシオトシヒコ氏の言葉をお守りに自分の道を進む

 長谷川さんがこれまで色鉛筆画一筋に歩んでこられたのは、著名な美術評論家との出会いが大きい。その人物は、当時、美術雑誌『美術の窓』等にコラムを持っていた、故ワシオトシヒコ氏だ。「辛口の評論で有名だったワシオさんが『油絵が頂点にあるヒエラルキー※1の中、鉛筆だけで人に感動を与えられることに感動した。この先は油絵を勧める人がたくさん出てくるだろうけれど、このまま思うように色鉛筆画を描き続けなさい。僕の名前を出しても構わないから』と言ってくださったんです。この言葉をお守りにして、色鉛筆画を一筋に描き続けてきました」

 これまで進路を選ぶ際に、都会の学校や大学、海外を勧める人も多くいたが、長谷川さんは伊賀から通う道を選んだ。大学を選ぶ決め手も当時の成安造形大学の学長が、色鉛筆画に対する理解があったことと、大学の立地が自然豊かな場所だったことだった。「高層ビルが立ち並ぶ都会は息が詰まるんです。自然豊かな伊賀が好きです」と話す長谷川さん。最近は色鉛筆画の技法をいかして、デジタルアートの受注製作や愛犬・愛猫の肖像画の制作も行っているという。自身の次の作品の予定を聞くと「自宅で飼っている黒ねこちゃんを描きたい」との答え。動物と伊賀をこよなく愛する若きアーティストから、今後どんな作品が生まれるのか注目したい。

※1ヒエラルキー…「階層」「階級制」を意味する言葉。基本的には社会における「ピラミッド型の階級組織構造」をさす。

右:「第28回パリ国際サロン・ドローイング展」(2014年)に入選した「犬~笑顔~」
手に持った作品:「甘えん坊」

※長谷川まどかさんの今後の展覧会の予定等は、Instagram:@mado.colorpencilをご覧ください。

 

取材日:2023年12月

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