Shinobi Hataraki by Yoshiki Takao

高尾善希の「忍び」働き

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巻の八 忍者の史料を求めて

三重大学人文学部准教授(三重大学国際忍者研究センター担当教員)高尾善希

お仕事を具体的に

 2017年7月に開設された三重大学国際忍者研究センターは、具体的にどのようなことをするのか。あるいは、すべきなのか。突き詰めて考えると、決して自明なことではありません。もちろん概念の方ははっきりとしています。

 まず、三重大学が標榜する「忍者学」とは、私流の説明でいえば、①文理を越えて史実の忍者を研究する、②フィクションの忍者を研究する、などです。いわゆる学際的 忍者研究フィールドです。その「忍者学」を、研究したり、宣伝したり、「忍者学」を地域貢献に繋げたり、「忍者学」研究者のネットワークを形成したりする拠点、それがセンターの役割です。そこまでは、いいでしょう。 

 ただし、それを具体的な活動に落とし込まなければなりません。そこに創意工夫が必要です。それが私の仕事です。講座など毎年毎回開催していることは、そのまま続けるとして、創意工夫の部分はどのように着手すべきか。

 素人も玄人も考えつきそうなことは、「『忍者学』のセンターだから、まず、忍者学に関する情報を集めましょう」ということです。センターは、とりあえず、前述①、史実の忍者に関する調査に力点を置いています。史実の忍者が全てのはじまりで、それがわからないと話がはじまりません。全国に史実の忍者がいて、全国にそれに関する史料があります。もちろん、旧伊賀国地域にも、たくさん存在するでしょう。それらの史料を集める必要があります。しかし、どうやって……。

モノやヒトが揃い…「忍プロ」

 このような悩みがあるのですが、2017年7月のセンターの開設当初は、伊賀市上野丸之内の「ハイトピア伊賀」3階に、私の机がひとつあるだけでした。10月に「ハイトピア伊賀」2階に「伊賀研究室」を設けて、それ以降、そこに書棚とか机とか椅子とかがだんだんと運びこまれ、インターネットやファックスなどの事務道具も設置されました。

 10月、研究員として、ロシアからクバーソフ・ヒョードル君も来ました。しかし、センターが整うにつれて、事務仕事が山積、どうしようもなくなりました。ヒョードル君も日本の習慣に慣れておらず、手伝っていただくわけにはいきません。それに、研究員は研究に専念してもらい、事務をやらせるべきではないとも考えました。

 そこで「事務職員を雇用していただきたい」と大学側に要求すると、意外にも「いいよ」とのお返事をいただきましたから、伊賀市出身で、過去に蓑虫庵にも勤めた経験のある、酒井裕太君という若手の方に、事務職員として着任してもらうことになりました。それはたいへん助かりました。2018年6月のことです。

 ここで、センターの教職員の方々を紹介します。伊賀研究室では、私(センター専任・人文学部兼任)・研究員(現在、クバーソフ・ヒョードル君は退職し、後任に池ノ谷匡祐君)・事務職員(酒井裕太君)の3人制です。その他は、センター開設当初より3人制で、安食和宏先生(人文学部専任[人文学部長]、センター兼任[センター長] 現在、藤田伸也先生)・山田雄司先生(人文学部専任、センター兼任[副センター長])・吉丸雄哉先生(人文学部専任、センター兼任)です。

 さて、モノやヒトも揃い、前述した史実の忍者の史料情報を拾う問題を考えなければならなくなりました。私が考えたのは「忍者の史料なんて、どこにあるのか皆目見当がつかないのだから、いっそのこと、アンケートを全国にばら撒(ま)いてしまえ」という大雑把だけれども確実な方法でした。そのアンケートに対する回答をもとに、長時間かけて現地調査をかければ宜しい、という計画です。まるで、鉈(なた)で薪を割るような単純で大胆なやり方ですが、かえってうまくいくのでは、と考えました。

 2018年8月、各自治体の教育委員会・博物館・研究機関など、約900箇所に向けて、「そちらに忍者関係の史料があればセンターに教えてほしい」という旨のアンケートを送付しました。全国約900箇所の所在地データはどこで入手したのか? というご疑問が沸くと思いますが、私の知り合いに博物館学芸員がたくさんおりますので、彼らがもっているデータを拝借しました(博物館はチラシなどを全国に送付しますから、そういうデータをあらかじめ持っているのです)。

 これは完全に私の思いつきなのですが、結果、全国から約100件ものご回答をいただきました。これらの計画を名付けて「全国忍者調査プロジェクト」(略称「忍プロ」)。「アポロ計画」みたいなものですね。その結果の一端はいつか別稿でご紹介することにしましょう。

三重大学の記者会見で「忍プロ」を発表したとき(高尾・山田雄司先生)

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