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せんせいの句会 代表 森永侑樹さん
芭蕉翁生誕380年を記念して俳句カードゲーム「THE kukai(くかい)」を開発
二音で世界が変わる、心がつながる「THE kukai」
「二音穴抜きの俳句に、二音を当てはめるだけで俳句が完成する、今までにないカードゲームを作りました。二音変わるだけで、全く違う世界や物語が生まれます。句会形式なので、参加者の意見交換によってさらにゲームが盛り上がります」と話すのは、カードゲーム「THE kukai」を開発した「せんせいの句会」代表の森永侑樹さん(32)。
芭蕉翁生誕380年である今年(2024年)は、伊賀市で様々な記念事業が実施されている。10月12日の芭蕉祭のリリースに向けて「せんせいの句会」が準備を進めている、俳句のカードゲーム「THE kukai」もその一つ。
この「THE kukai」は、二音穴抜きの俳句(お題)カードに、手札の二音カードから「ピッタリ」と思うカードを合わせて俳句をつくるカードゲーム。参加者はつくった俳句をよみあい、どんな世界や物語を想像したかを話し合って、好きな句に投票。最後に最優秀句を発表する。カードは全部で100枚。お題カードには芭蕉翁の句(例:さまざまの ○○思い出す 桜かな)とオリジナルの句(例:しゃぼん玉 さいごは○○に 触れて消え)を使用。二音カードには「ゆめ」「つみ」「さか」など二文字のひらがなを使用している。これまで何度か体験会を実施していて、完成すると伊賀地域の小中学校の全クラスに配布する予定。
「せんせいの句会」は伊賀市を拠点に、俳句を使った教育実践を行う先生たちが中心となり活動している会で、これまで勤務校での「俳句クラブ」の活動や伊賀市の教員向けの俳句研修などを行ってきた。会員同士で楽しむ句会も定期的に実施している。代表を務める森永さんも現役の小学校の教諭だ。
子どもたちの心の交流の場として句会を授業に!
同カードゲームの立案者である森永さんは、以前から授業に句会を取り入れていた。その経験から、句会形式のカードゲームを思いついた。
「十七音でよむ俳句は、作文と違って、コツをつかめば誰でもつくれます。つくった俳句から書かれていない部分を想像し、鑑賞しあう句会は、いろいろな意見が飛び交い、その全てが正解。他者に思いを馳せ、心の声に寄り添うことで、互いの理解が深まったり、新たな発見につながることもあります。授業で行う句会も、俳句に込められた友だちの心の声に耳を傾け、話し合うことで、温かい心の交流が生まれています」
普段の授業ではあまり手を挙げない子の俳句が選ばれて、その子が人気者になったり、句会では普段と違う児童の姿が見られることもある。授業で句会を行うようになってからは、学校生活の中で児童から「また、俳句ができた!」「今のは俳句になりそう」といった声があがることが多くなった。
「普段から俳句の種を探すこと、日々の生活の中で小さな幸せ、感動を見つけることで、人生がすごく豊かになると思います。種は子どもたちの素敵な一面であるかもしれないし、学校行事や家庭での出来事かもしれない。見つけた種を俳句に紡いで句会で共有することは、子どもたちはもちろん、学校にとっても、地域にとっても宝物になると思います」と森永さんは俳句と句会の魅力について語る。
「THE kukai」を伊賀市の名物に!全国へ発信したい
今後はゲームの完成に向けて、体験会の感想などをふまえながらお題の俳句と二音の選定などを会のメンバーで、ブラッシュアップしていく予定。
「今回対象としているのは伊賀地域の小中学校だけですが、今後は三重県や奥の細道でつながりのある場所などにもこの活動を広めていきたい。このゲームが伊賀の名物となって、全国に発信できるよう、今後も活動を継続していきたいです。現代はSNSが普及して文字だけのやりとりが多くなりがちですが、顔を合わせながら俳句を語り合うこのゲームで、自分と他人の意見が肯定できる、人の気持ちに寄り添える子どもが増えてくれればうれしいですね」と、森永さんはこの事業への熱い思いを語った。
※せんせいの句会では「THE kukai」の完成に向けて、2024年7月15日までクラウドファンディングを実施しています。
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※せんせいの句会の活動はこちらから
取材日:2024年5月