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初代女性杜氏 森喜るみ子さん 2代目女性杜氏 豊本理恵さん

女性杜氏が2代に渡って醸す珠玉の純米酒 森喜酒造場

父の蔵を夫と継ぎ酒造りの道へ 純米酒のみを醸す蔵へ

「実家と酒蔵(以下蔵)がつながっていたので、小学生の頃から蔵人のまかないを運んだりして、蔵には日頃から出入りしていました。お酒を仕込む作業も良く見ていましたよ」と話すのは、千歳にある「森喜酒造場」の専務で初代女性杜氏の森喜るみ子さん。女人禁制というイメージが強かった酒造りに携わって、30年以上になる。

三重県伊賀市千歳にある森喜酒造場

三重県伊賀市千歳にある森喜酒造場

父の急病を受けて、夫の英樹氏とともに蔵を継いだのは平成のはじめ。大手メーカーの契約打ち切りや杜氏の確保に苦戦し、廃業を考えたこともあった。そんな中で出会ったのが、蔵を継いだ女性が酒造りに奮闘する漫画『夏子の酒』(尾瀬あきら作)。背中を押してもらった気持ちになったるみ子さんは尾瀬氏に手紙を送り、その気持ちに打たれた同氏は、全国の酒蔵を紹介してくれた。夫妻は、さらに酒造りの魅力に引き込まれ、蔵の存続を決意。そして誕生した純米酒「るみ子の酒」のラベルのイラストを尾瀬氏が描いたという話は、ご存じの方も多いだろう。

後を継いでしばらくは、但馬から赴任していた杜氏のもとで酒造りに携わっていた夫妻。その杜氏が体調を崩したことから、夫妻が製造責任者、蔵元杜氏として酒造りをはじめたのが、平成9年。翌年には、生産する酒を全て純米酒に替えた。「いろいろな酒蔵の方やお酒と出会ううちに純米酒の魅力にはまり、純米酒しか飲めない体になってしまって(笑)蔵元杜氏なので、責任は負わなければなりませんが、やりたいことにチャレンジできます。自分の飲みたいお酒が造れるのが、良いところですね」と、るみ子さんは笑う。

昔ながらの蓋麹、無農薬の酒米生産、ストイックなまでにこだわった酒造り

「酒の原料は米、麹、水ととてもシンプルですが、蔵によって造り方がさまざまで、それが酒の味にも反映されます。酒造りには昔から『一麹、二酛、三造り(いちこうじ、にもと、さんつくり)』という鉄則があって、自蔵で力を入れているものの一つに、麹づくりがあります」と話す、るみ子さん。同蔵の麹は最も小さい単位で造られる「蓋麹(ふたこうじ)」と呼ばれるもの。4時間おきに麹菌を浸けた米が入った蓋を積み替え、なおかつ麹室の温度・湿度管理をしなければならない、とても手間のかかる麹だ。しかし、しっかりした酒質を確実につくるためには、この蓋麹が最適なのだという。

そして、何と言っても酒の味を大きく左右するのが酒米。同蔵では、酒粕を肥料にし無農薬で自ら栽培した酒米を使用。ほかにも地元で信頼をおく農家が栽培した酒米を主に使用している。「お天道様には勝てません。酒造りはお米の機嫌を伺わないと造れませんから」と冗談まじりに言うるみ子さん。その年の米の出来によって、水の給水具合がかわり、仕込みの際の米の溶け方も変わってくる。「蔵をまとめるのはもちろん、そういったリスクマネージメントをしながら酒造りをするのも杜氏の仕事です」と杜氏の苦労を話す。

2代目女性杜氏そして子どもに受け継いで欲しいこと

すっぴん るみ子の酒 9号酵母 無濾過生原酒(右) るみ子の酒 特別純米 9号酵母 ※しぼりたての生原酒 12月上旬〜販売予定

すっぴん るみ子の酒 9号酵母 無濾過生原酒 (右) るみ子の酒 特別純米 9号酵母            ※しぼりたての生原酒 12月上旬~販売予定

「酒造りは重い米を運んだり、冷たい水を使ったり、朝がはやかったり、とても重労働。うちの蔵は機械が少ないこともあり、とにかく手作業が多い。膝は痛いし」と笑うるみ子さん。平成28年の秋の仕込みから、20年近く蔵人として働いている豊本理恵さんに杜氏職をバトンタッチした。そして、3年前からは、娘の希さんが蔵人として酒造りに携わっている。「理恵ちゃんはとても器用で我慢強い。蔵人の信頼も厚い。良い杜氏になってくれると思います。酒造りに関しては、要の部分は変えずに、新しいことにもチャレンジして欲しい。娘にも酒造りの精神と技術を受け継いでもらえたら」と後継者にエールを送る。

豊本さんは「酒造りは重労働ですが、お客様からいただくお褒めの言葉が何よりの励み。同じ材料で、同じ工程で造っても同じものが出来ないのが、酒造りの面白さでもあります。ご夫妻のもとで、信頼のおける蔵人と楽しい酒造りをおこなっていきたい」と語る。

新商品の開発も積極的におこなっている同蔵。新杜氏就任を記念して造った酒「RIE STYLE」は、伊勢錦(酒米)を山廃仕込みしたもので、昨年度の仕込み分は今秋にほぼ完売という人気ぶりだ。「これからも新しい挑戦をし続けていきたい」と目を輝かせる、るみ子さん。これからどんな酒が登場するのか期待したい。

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