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大田酒造 蔵元七代目・新杜氏 大田有輝さん

伊賀を表現できる酒を発信したい

東京農業大学短期大学部醸造学科、独立行政法人酒類総合研究所、鈴鹿の蔵元と自社で酒造りを学ぶ

大田さんが昨年自社の蔵で仕込んだ新商品『半蔵 &(アンド)』

大田さんが昨年自社の蔵で仕込んだ新商品『半蔵 &(アンド)』

「杜氏になったのは、大学での酒造りが楽しかったこと。そして、今の日本酒業界では蔵元や社員が自社の杜氏を務めるのがスタンダードだからです」と話すのは、三重県伊賀市上之庄の蔵元、大田酒造の七代目で、今秋から同蔵の杜氏を務める大田有輝さん。

大田さんは、東京農業大学短期大学部の醸造学科で酒造りなどを学んだのち、広島県の独立行政法人酒類総合研究所で研修を受け、さらに鈴鹿の蔵元「清水清三郎商店」で2年、その後自社の蔵人※として2年間経験を積んだ。蔵人時代には自身が仕込んだ酒を新商品『半蔵 &(アンド)』として販売。今秋からは、自社の杜氏として全酒造りの責任を担う。

「プレッシャーはあります」と大田さん。今期は以前のメンバーに加え、経験の浅い若い蔵人が加わる。仕込み期間を充分に設け、けがやミスがなくクオリティーの高い酒が造れるよう、じっくり作業を進めていくつもりだ。

酒造りは杜氏と蔵人のコミュニケーションが大切

自社の蔵で酒を仕込む大田さん

自社の蔵で酒を仕込む大田さん

大田さんが酒造りを学んだ鈴鹿の蔵元は、年間を通して酒造りを行っている。大田酒造と同じく、伊勢志摩サミットで蔵の酒が選ばれた。

「『作(ざく)』を醸す内山智広杜氏は、名杜氏と聞いていましたが、酒造りの質問に気さくに応えてくださる優しい方。会社がイメージする酒の味から外れないように、気候や温度に合わせた細かい対応ができる高い醸造技術を持った方です」と大田さんは話す。この鈴鹿の蔵は、発酵の調整が大変で、酒造りが非常に難しいとされる夏場も仕込みをおこなっており、同杜氏からは気温が高い時の対応の仕方や仕込む原料による味の違いなど、とても多くのことを学んだ。

杜氏になるにあたり、自社の先代杜氏には、自社の蔵の水や気候の性質、温度管理の方法など、大田さん自身が酒を1本仕込む際に、直接指導してもらった。朝夜の気温変化に対応した仕込みなど、大田酒造の杜氏ならではのアドバイスをたくさんもらったという。

大田さんがこれまで学んできた中で大切だと思うことの一つに、蔵人同志のコミュニケーションがある。酒造りは手作業で行うことが多く、杜氏が行いたい作業にどれだけ蔵人が応えられるかで、酒の仕上がりが変わってくる。特に大吟醸は、コミュニケーションがうまく取れたかどうかが、味に一番出る気がするそうだ。「おいしいお酒を造っている蔵ほどコミュニケーションがうまくとれている。私も気兼ねなく話してもらえる杜氏になりたいです」と大田さん。

日本酒で伊賀をPR 蔵の将来を見据え後継者の育成にも力を注ぎたい

三重県伊賀市上之庄にある株式会社 大田酒造

三重県伊賀市上之庄にある株式会社 大田酒造

大田酒造で使用する酒米は、主に三重県産、伊賀産の地元契約栽培米「神の穂」と「山田錦」など。地元で採れた良質の酒米を使うことで、三重そして伊賀らしい味わいが出せるそうだ。「香りが華やかで、甘味があれば良いというものでもなく、トータルで香りと甘みがうまく調和する酒を目ざしています」。今期は新商品には取り組まないが、来期以降は新しい米を使った酒など、新商品づくりにも挑戦する予定で、特に食事と楽しむ食中酒に力を入れたいと意気込みを見せる。

同蔵では現在、香港、台湾、中国、オーストラリアなど海外の売り上げが1割近くを占めている。代表銘柄の『半蔵』は「服部半蔵」にちなんだもので、伊賀らしい味わいの日本酒『半蔵』を通して、伊賀を世界にPRできればと考えている。

最後に自身の今後の目標を聞くと「蔵が今後も存続できるよう人を育てていきたい。50年後、そしてその先も、その時代を担う後継者がその時代に合った酒を造っていって欲しい。私もまだ成長段階なので、まだまだ先の目標になりますが(笑)」と目を輝かせ語ってくれた。

※蔵人(くらびと)…杜氏のもとで酒造りに携わる職人

取材日2019年10月

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