伊賀焼の郷 長谷園(体験)
伊賀市丸柱569
0595-44-1511
Iga people
伊賀人バンザイ!
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土鍋がもたらす家族の時間 土鍋の魅力を発信したい!
「はじめて土鍋で炊いたご飯を食べたとき、その美味しさに感動しました」と話すのは、丸柱にある伊賀焼の郷 長谷園に嫁いで20年以上になる長谷圭未さん。
嫁ぐまでは、電気釜かガス釜で炊いたご飯しか食べたことがなかったという。伊賀焼の土鍋を使う家庭では、土鍋でご飯を炊くのは当たり前のことで、長谷家でも代々土鍋でご飯を炊いていた。スイッチ一つ押せば簡単にご飯が炊ける生活に慣れていた圭未さんにとって、土鍋で炊くご飯はかなりハードルが高く、義母に炊き方を教わって挑戦するも、失敗を繰り返していたそうだ。
圭未さんが嫁いできた1997年は、同社のタイル工場が閉鎖した後で、かなりの負債を抱えていた時期だった。そんな中、義父で会長である優磁さんとスタッフは、伊賀焼の土鍋の良さをいかした商品、だれでも簡単に炊ける土鍋「かまどさん」の開発に取り組んでいた。
火加減なし、ふきこぼれない。簡単に炊けて美味しい。ご飯の美味しさにこだわったところと、ふきこぼれを防ぐ研究に時間がかかり、嫁いでからさらに3年半を費やし「かまどさん」が誕生。
「かまどさんが誕生してからは、土鍋ご飯を炊くのが、らくらくに。ご飯を炊くのが得意になりました」と圭未さん。今では、かまどさん以外の土鍋も使いこなす、土鍋料理の達人になっている。
圭未さんは現在、同社で伊賀本店の店長を務めるほかに、商品企画やイベントの運営などにも携わっている。新商品の開発では、使い手として実際に試作品を何度も使用して、使用感や改善点を報告している。作り手と使い手の思いを同じにするために、デザインが可愛くても使いづらいと、厳しい意見を言うこともあるそうだ。
「お客様に満足して使って頂ける商品にするため、主婦の立場からいろんな使い方を試します。例えば、素手で持ったときは良くてもミトン(鍋つかみ)を使ったときはつかみにくかったとか、形が炒め物には向いていないとか、改善点を具体的に伝えるようにしています」
また、店長として本店で接客する際は、何よりもお客さんとの対話を大切にしている。「わざわざ丸柱まで足を運んでくださったお客様なので、ここに来てよかったと思っていただけるような楽しい会話を心がけています。お客様とお話をすると、商品の使用感やレシピを教えていただくことも。私が教わることもたくさんありますよ」と圭未さん。
私生活では主婦であり、二人のお子さんの母親でもある圭未さん。嫁いだ頃は仕事に比重をかけすぎて、子育てに手が回らなくなった時期もあったという。悩んで出した答えは、全て100%にしないで8割で合格点とすること。自分だけで頑張らず、周りの助けを借りるようにすると、上手く回るようになった。「家族に働いている姿を見せられるのは、ありがたいことです。家族みんなが協力することで、お互いをいたわる気持ちも生まれます。たくさん家族に助けてもらって本当に感謝しています」
また、家族の中でも会長で義父の優磁さんの存在は大きいという。嫁いだときから、嫁ではなく娘のようにかわいがってもらったという圭未さんだが、仕事での義父の印象を聞くと「会長は優しくてそしてとても厳しい方。新商品の完成もなかなかOKがでないんです。耐久性はもちろんですが、美味しさへのこだわりが強い。私達がここまで美味しくできるからOKだと思っても、絶対美味しいと言えるところまで妥協しない。最後まで研究するのは会長で、その姿勢を見習わないといけないと思っています」と尊敬の気持ちを語る。
かまどさんのヒットで炊飯土鍋のイメージは定着しているが、土鍋はほかにもいろんな調理ができると圭未さんは話す。長谷園では、「みそ汁鍋」や「ビストロ蒸し鍋」、燻製が楽しめる「いぶしぎん」など多くの個性的な商品を生みだしてきた。
圭未さんの家の台所では、いつも三つの土鍋が出しっぱなしで、毎日の食事づくりに大活躍している。特に煮込み料理は得意で、蓄熱効果を利用してゆっくり火を通すことで、煮崩れず味がしみ込んで美味しく仕上がるのだそう。みそ汁を土鍋で作るのもおすすめで、家族の朝の支度に時間差があっても温め直しの手間が省けるという。
「土鍋はその場で調理できるので、家族の会話もはずみます。家族団らんのお手伝いが土鍋でできたらうれしいですね。HPや冊子等で土鍋の魅力やレシピを発信しています。興味がある方はぜひのぞいてみてください。今後はもっとイベントにも力を入れていきたいですね。全国からたくさんの方が伊賀に足を運んでいただけるようなイベントを企画して、少しでも伊賀の観光のお役に立てればと思います」と笑顔を輝かせた。
※毎年恒例の長谷園 窯出し市は5月2日から4日にかけて行われます