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画家・美術作家 岩名泰岳さん

島ヶ原の自然や現状を描いた作品を各地で発表 地元の若者と共に伊賀の芸術を発信

島ヶ原村の記憶を残したいという思いから画家の道へ
恩師 故・元永定正氏から教わったこと

「市町村合併で自分の住んでいる村がなくなるということ。過疎化や就職先不足という村の現状を中学生なりに肌で感じ、村の記憶や魅力、現状を伝える仕事をしたいと思ったのが、この道に入るきっかけでした」と話すのは、伊賀市在住の画家・岩名泰岳さん。

中学生から独学で絵を描きはじめ、上野高等学校に進学し、本格的に絵の勉強がしたいと思っていたときに、通学電車で偶然知り合ったのが、伊賀市出身の画家・元永定正氏だった。高校生の間、月に1度、元永氏が大阪で開催している合評会に、自分の絵を持参し指導を受けた。「絵描きの人生いつも崖っぷち」という言葉を冗談交じりに口にしていた同氏。温厚な人柄だったが、作品創りに関しては、繊細で厳しい方だと感じた。「元永さんは、他にはない自分のオリジナル作品を創る大切さや、伊賀の外の世界、画家として芸術の世界とどう付き合っていくかを教えてくださいました。恩師であるとともに、画家の道に導いてくださった恩人でもあります」と岩名さんは同氏について語る。

2010年に成安造形大学を卒業。同年、若手アーティストの登竜門のひとつ、アートアワードトーキョー丸の内 2010 で準グランプリを受賞する。その後、ドイツのデュッセルドルフ芸術大学に2年間留学。大学時代から島ヶ原をテーマにした作品を制作し続けてきたが、芸術が盛んなヨーロッパで絵を学ぶことで、絵の技法や作風は変化していった。当初は地元で活動するつもりはなかったが、留学中に起きた東日本大震災が、地元で活動する転機になった。「震災後、地方に移住した方がたくさんいらして、地方で生きる価値が見直されつつあると感じました。私も自分の絵の原点である島ヶ原に戻って、地元をテーマにした作品を制作し、発表しようと決意しました」と当時を振り返る。

島ヶ原の若者たちと地域文化集団「蜜ノ木」を結成
伊賀の芸術の掘り起こしも

帰郷後しばらくして、2013年には、島ヶ原の若者たちと地域文化集団「蜜ノ木」を結成。メンバーとともに、地元島ヶ原の祭り「観菩提寺正月堂 修正会」への参加や地元の地域文化の取材、発信を行ってきた。

2018年に自身のアトリエなどで開催した展覧会「くずれる家」では、戦前から現代までの伊賀の芸術活動を紹介。故・浜辺萬吉氏や恩師・元永定正氏らの作品、現在活動されているアーティストの作品を展示。昭和初期に農村部の青年団が発行した文集「七ツ乃華(ななつのはな)」も展示した。県立美術館の学芸員などと協力して行った調査では、戦前の伊賀は帝展(後の日展)に3人が同時に入選するなど、芸術活動が盛んで「洋画のまち」と呼ばれていたことが判明した。「大きな美術館や大学がない伊賀では、地元出身の画家の形跡は、時間が経つにつれて埋もれてしまうのが現状です。今回の調査で見つかった作品もあり、これからも調査を続けていきたい」と話す。

観菩提寺正月堂 修正会に参加する蜜ノ木講(2015年2月)

戦前・戦後の伊賀地方の画家たちの作品を島ヶ原で展示した展覧会
「くずれる家」<蜜ノ木>主催+岩名泰岳企画(2018年10月)

コロナ禍で今後の作品創り、発表の場を模索

これまで各地で精力的に作品を発表してきた岩名さん。最近では、2019年に個展「道標」(タグチファインアート、東京)を開催、ほかにも「青森EARTH2019」(青森県立美術館)や今年の夏には「#ステイミュージアム」(三重県立美術館)などに出展した。

今年は、いくつかの展覧会の開催が決まっていたが、コロナ禍で延期になった。緊急事態宣言が出され、移動の自粛が求められた今春、蜜ノ木のメンバーとともに、地元を見つめなおそうと、疫病平癒を祈願するお堂や祠などを参拝した。そして、そのときに見た石仏などをテーマにした新たな作品が生まれた。「コロナ禍でこれまでの価値観や生活のあり方が大きく変わったと感じています。私の作品にも変化がありました。コロナ禍でも変わらない島ヶ原の自然、凄いスピードで変わってゆく都市部の躍動感の両方を感じながら、今後の作品創りや作品の発表の仕方を模索していきたい」と今後の活動について語ってくれた。

「#ステイミュージアム」展(三重県立美術館)
展示風景(2020年7月2日〜9月6日)

緊急事態宣言中に島ヶ原を歩き、疫病に由来するお堂などを参拝する<蜜ノ木>のメンバー(2020年4月)

コロナ禍で制作した作品「双子、双子」(2020年/油彩、キャンバス)
島ヶ原の祠や石仏などがモチーフとなっている

画像提供:岩名泰岳さん

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