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忍者の聖地 伊賀

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第31回 三重大の忍者授業

三重大学人文学部 教授 山田 雄司

三重大学では2012年から忍者の研究を始めたが、地域の歴史について再認識してもらい、さらには最新の研究成果を知ってもらって、研究の裾野を広げていこうということで、私は2013年からは全学部全学年の学生を対象とした共通教育の授業として「忍者・忍術学」の講義をしている。

ここ数年は、私の書いた『忍者の歴史』(KADOKAWA、2016年)をテキストに、忍者の歴史について、映像を交えて講義している。毎年200名以上の受講希望者があり、教室に入りきれないため、抽選をして受講生を決めることが続いているので、学生の人気はあるのだろうと思う。講義内容は、忍者の「発生」、なぜ伊賀・甲賀が忍者で有名なのか、兵法と忍術、伊賀惣国一揆と甲賀郡中惣、天正伊賀の乱、神君伊賀越え、各地の忍者、忍者の教え、忍器、さまざまな忍術、江戸時代の忍び、創造された忍者、といったことを話している。

授業では、伊賀流忍者博物館を訪れ、その感想を記すというレポートと、期末試験を課している。レポートについては、どのような形式で提出しても自由で、創意工夫さについても加点することにしているため、例年さまざまなレポートが提出される。オーソドックスにレポート用紙に書いて提出してくるものもあるが、巻物にしたり、紙を折って手裏剣にして提出してくるものも多い。巻物では、筆で書いてくるものもある。さらに凝ったものになると、矢文にしたり、「神代文字」で書いたり、暗号で書いてくるものもある。また、授業で話した内容をもとに、紙で魚を作ってその中に文書を入れたり、「恋文」として提出されたものもあった。その中で一番驚いたものが、あぶり出しで書いてきたものである。大豆を浸した上澄み液か何かを使って書いてあり、ちょっと見ただけでは何と書いてあるかわからないが、あぶってみるとしっかり文字が浮き出てきた。

日本史B(忍者・忍術学)で提出されたレポート

レポートの内容については、忍者屋敷、博物館、忍者ショーに関して、ほとんどは行ってよかったと好意的に書いてある。しかし、三重・愛知出身者が大部分を占めるにもかかわらず、忍者博物館を訪れるのは初めてという学生が多いことが気になる。また、展示内容についての提言も少なからず記されている。例えば、建物や展示内容が古い、授業で話している内容と解説が異なるといった意見が見られる。展示内容は10年以上変わっておらず、その間、研究の進展により、水蜘蛛の使い方や手裏剣についての認識など、大きく変わった部分もある。また、五色米や「忍者文字」などについては、見学者に誤解を与える展示となってしまっているほか、「ネコの目時計」の記述は間違っている。

その他、学生の意見には、展示解説をしてほしかった、映像がほとんどなく、あっても古い、道具が本物なのか後に作られたものなのかわからなかった、解説図録がない、さわったり実際に動かしたりする体験型の展示になっていない、等々の意見が見られた。

授業は私が一方的に話すだけでなく、学生には毎回授業の感想や質問などを書いてもらい、そこから気づかされることも多い。これら学生の意見には傾聴すべきものも多いと思われ、私も授業改善や研究内容に取り入れている。伊賀においても、「忍者の聖地 伊賀」であるからには、それにふさわしい博物館であったり、世界から観光客を迎え入れて、満足して帰ってもらえるようなまちづくりをしていってもらえたらと切に思う。

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