芭蕉翁記念館
伊賀市上野丸之内117-13(上野公園内)
0595-21-2219
Iga people
伊賀人バンザイ!
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生誕地の博物館で芭蕉の作品を深く味わってほしい
「何百年も前の作品に触れて共感したときは、当時の人と思いがつながった気がします」と話すのは芭蕉翁記念館の学芸員を務める服部温子さん。
鈴鹿市出身で、南山大学に進学し日本文学を専攻。その後、奈良女子大学大学院に進学。博士課程を修了後、大学の非常勤講師などを経て2020年に同館に着任。2023年からは正規の学芸員として勤務している。
大学では江戸時代の歌舞伎を中心に研究に取り組んだ。大学院では芭蕉の門人である嵐雪の研究を中心に、芭蕉と俳諧についても研究を行った。
「芭蕉や門人たちは、旅の句以外にも普段の日常生活を題材にした句もたくさん詠みました。蝶や花といった選ばれた美しいものだけを詠んでいた和歌などと違って、芭蕉が築いた俳諧は人間の日常の素晴らしさを肯定してくれたように感じます。そんな俳諧の世界が好きです」と服部さん。
芭蕉翁記念館があるのは、伊賀上野城や伊賀流忍者博物館、芭蕉ゆかりの建物である俳聖殿がある上野公園(三重県伊賀市上野丸之内)。四季を通して多くの観光客が訪れる観光スポット。 |
年4回実施している企画展では毎回、芭蕉の真筆を展示。ギャラリートークも開催している。 |
同館の収蔵庫「芭蕉文庫」には、芭蕉の真筆約30点を含む約4000点にも及ぶ資料が収蔵されている。これは日本屈指の収蔵量で、研究対象として貴重なものも数多くあり、全国から研究者も来館。観光客を含めると、年間で1万人ほどが同館を訪れている。
「着任して驚いたのは、研究者ならだれでも知っている『更科紀行 芭蕉自筆稿本』をはじめとする芭蕉の真筆など、研究する上で大変貴重な資料をたくさん所蔵していることです。中には『月見の献立』など、伊賀で代々伝わってきたものもあり、地震などの災害や戦火をまぬがれ、こうした資料が残っているのは、地元の方が芭蕉を敬い、大切に守ってくださった証だと感じます」と服部さんは話す。
さらに、当時の芭蕉の人物像についても「芭蕉は俳人として優れていただけでなく、非常に人望が厚く、優秀な門人にも恵まれました。没後も毎年法要が行われたり、追悼集なども出版されたりしていることからもその人柄がうかがえます」と話す。
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令和7年度 芭蕉翁記念館企画展「江戸時代の出版と芭蕉」で展示されている芭蕉の真筆。 芭蕉筆「夕顔に」発句短冊(伊賀市蔵) |
![]() 同企画展でのハンズオン展示。江戸時代の紙に触れることができる。クイズなども交えながら親しみやすい展示にしている。 |
服部さんは同館で開催する企画展の企画、運営を中心に、学童保育への出前授業や講話なども行っている。芭蕉翁生誕380年だった昨年は芭蕉祭の特別展として個人が所蔵する『藤堂新七郎家系図』などを公開。また、伊賀市で20年ぶりに俳文学会全国大会を開催した。
「芭蕉に関する博物館はほかの地域にもありますが、芭蕉の真筆を毎回展示しているのは当館だけです。子どもにも親しんでもらえるように、クイズを出題したり、ハンズオン展示なども実施しています。芭蕉が暮らした地にある博物館として、芭蕉の作品を深く味わえる、そして芭蕉のいろいろな面も感じていただける企画展を実施していきたいです」と抱負を語った。
来館した大人と一緒に小さなこどもも楽しめるよう、芭蕉のぬりえも用意している。 |
芭蕉翁生誕380年の記念事業で作成した『芭蕉さんガイドブック』。市内公立小中学校に配布したほか、同館では希望者に配布も行っている。 |
【期間】令和7年 3 月14日(金)~6月15日(日)
【時間】8:30~17:00(入場は16:30まで)
※企画展の詳細は芭蕉翁記念館 ℡0595-21-2219までお問い合わせください。
※企画展、ギャラリートーク、ワークショップともに入館料が必要です。
取材日:2025年3月