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糸伍株式会社 代表取締役社長 松田智行さん

機能的でファッショナブル 組紐の特性をいかした新商品を開発

全国初の組紐マスクを昨春開発 伊賀ブランド「IGAMONO」認定品に

マスク用の組紐を織る機械。通常より幅が広い組紐を織るため機械を改造している

 「実は、当社ではコロナ禍以前の一昨年秋から、着物に合う組紐のマスクカバーの開発を進めていました。しかし、新型コロナウィルスの感染が広がりをみせ、マスクそのものを組紐で作ることにシフトし、誕生したのがこの商品なんです」と話すのは、伊賀市上野鉄砲町で機械織り組紐製造を行っている「糸伍株式会社」の4代目、代表取締役 松田智行さん(45)。

 マスク用の組紐製造にあたっては、通常の組紐より数倍も幅が広いものを製造する必要があり、機械を改造した。立体的な形づくりにも苦労し、型紙を何度もおこし、数十パターンもの試作を重ね、現在の形に仕上げた。何回も手洗いできるよう、表地はポリエステル、裏地はコットン100%のダブルガーゼを使用。色は、白、ピンク、ブルー、黒があり、手裏剣等の刺繍が入ったものもある。

組紐ならではの織りの美しさが特長の組紐マスク

 昨秋には、全国初の組紐マスクということで、伊賀ブランド「IGAMONO」の認定を受けた。伊賀市上野丸之内の「伊賀伝統伝承館 伊賀くみひも 組匠の里」や同社のオンラインショップから購入が可能で、これまでの累計販売数は約5,000枚にのぼる。

 「おかげ様で、着物はもちろんスーツにも合うマスクとして好評をいただいております。今後は更に高い遮断効果が期待できる、不織布が入れられる内ポケット付きマスクを開発する予定です」と話す松田さん。改良品の開発にも意欲的だ。

工場では昭和時代の織機が活躍 機械を熟知した塾練職人が仕上げる組紐

新商品のシューレース(靴紐)を織る織機。シューレースは要望に合わせて伸縮具合を調整して織ることが可能

 同社の創業は昭和29年。当時は手組みが主流だった組紐業界で、生産性向上と商品の均一化をはかることを目ざした五人が、機械織り組紐製造の会社を起業。社名は「糸」と五人の集まりという意味の「伍」を合わせ「糸伍」とした。染色から組みあげまでを行う一貫生産を実施。現在は約50台の織機が稼働する、日本でも最大規模の機械織り組紐メーカーである。機械のほとんどは昭和時代のもので、機械の製造メーカーが廃業する中、熟練職人が機械のメンテナンスを行いながら商品を仕上げる。コロナ禍以前は年間約9万本を生産していた。

 「うちの機械は古いものが多いので、毎日どこかが壊れます(笑)。30代、40代の職人に、機械の扱いや修理の仕方を教えているのは、主に80歳の職人です。当社の組紐は機械織りではありますが、職人技があってこそできるものなんです」と松田さんは話す。

プロスポーツ選手も使用 組紐の靴紐を扱う新ブランドを起ち上げる

組紐マスク、シューレース、三重とこわか国体のメダル紐にも組紐の技術がいかされている。マスクはLGBT啓発用のものもある

 昨今の着物離れ、少子化による新成人の減少。そしてコロナ禍で、販売イベントの中止など、大変厳しい状況下にある組紐業界。「当社の昨夏から秋にかけての売上げは、前年度の9割減でした。大変厳しい状況です」と話す松田さん。少しでも売上を伸ばすため、新商品の開発に日々取り組んでいる。これまで、主要な国際大会のメダル用の紐やLGBT啓発グッズなど様々な新商品の開発に取り組んできた。今秋に三重県で開催される三重とこわか国体のメダル用の紐の委託も受けている。

 そして今年の3月からは、新ブランド「kushule(クシュレ)」を東京の会社とともに起ち上げた。これまでにない新しいタイプの組紐のシューレース(靴紐)を扱うブランドだ。組紐の特性をいかした同商品は、伸縮性があり、結びやすくて、解けにくく、切れにくい。そして組紐ならではの美しい色とデザインが特長だ。すでに野球やサッカー、モータースポーツといったプロ選手も使用している。プロ選手用のオーダー商品は、選手のポジションや用途に合わせ、伸縮具合などを調整、試作を重ね提供している。

 流行調査のためデパートをくまなく見て回るなど、常に新商品へのアンテナをはっている松田さん。今後の夢を聞くと「今まで日本になかった分野、スポーツ分野の靴紐を席巻できたら嬉しいですね。組紐産業を継承していくためにも、いろいろな挑戦を続けていきたい」と熱く抱負を語ってくれた。

取材日:2021年2月

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