伊賀からずっと作品を発表し続けたい イラストレーター 田槙奈緒さん

伊賀人バンザイ!

第10回

伊賀からずっと作品を発表し続けたい
イラストレーター 田槙奈緒さん

イラストレーター 田槙奈緒さん

幼い頃からの美大進学の夢を叶えイラストレーターに

 2013年から6回にわたって、ふるさと会館いが(昨年閉館)で開催されたライトアップイルミネーション「光ARTのChristmas」。同イベントの2017年と2018年に、会館の窓ガラス約40m一面に描かれたクリスマスのイラスト、最近は銀座通りの花屋さんの窓などにも登場しているこのイラストの作者は、三重県伊賀市在住のイラストレーター田槙奈緒さんだ。光のイベントでは、田槙さんのイラストを多くの方が撮影し、話題になった。

伊賀市内の花屋の窓にイラストを描く田槙さん

伊賀市内の花屋の窓にイラストを描く田槙さん

田槙さんは鹿児島県生まれ。幼い頃に住んでいた奈良では、近所に美術関係の仕事をしていた方がたくさん住んでいて、遊びに行くとお面や粘土など、いろんな物創りを教えてもらった。自然と美術への興味が深まっていき、5歳の頃には「美大に行きたい!」と母親に宣言していた。

その後、旧島ヶ原村(現三重県伊賀市)に引っ越すも美大進学への気持ちは変わらず、中学校の文化部活動では油絵クラブに、名張桔梗が丘高校(名張青峰高校の前身)では美術部に入部。高校卒業後には夢だった、京都の嵯峨美術短期大学、デザイン科に入学。イラストレーションや絵本、パッケージデザインなどについて学び、さらに同大学のデザイン専攻科に進学し、イラストなどを学んだ。

卒業後は伊賀の中学校の美術の講師や、出身大学の研究室の助手をつとめた。島ヶ原で絵画教室をはじめ、自身の作品制作のほかに、イラストレーターの仕事も行い、お菓子などのパッケージや絵本のイラストなどを手がけた。中でも大作は、大阪のカフェの約6m×約14mの天井画だ。ヘルメットを被って、雨合羽を着て、足場にのって天井に絵を描いた。「大変だったけど、楽しかった。この天井画の経験があったので、大きな窓ガラスに描くのも抵抗はありませんでした」と田槙さんは笑顔で話す。

作品創りは常に頭の中に 伊賀の風景が作品のイメージになることも

2020年夏の作品展の様子

2020年夏の作品展の様子

自身の最近の作品は、アートパネルや絵本、張り子の造形物、ブローチといった小さめのものが多い。「家に飾って楽しんでいただける作品を中心に創っています。私の作品を見て心が和んだり、楽しい気持ちになっていただけたら嬉しい」と作品について話す。描かれているのは、自然や動物、少女などで、その多くにスクラッチという技法が使われている。これは、紙にオイルパステル(クレヨン)を塗り、絵の具を重ね、ひっかいて下のクレヨンを描き出すというもの。作品には、スクラッチで描いた絵を切って何枚も貼り合わせた貼り絵を良く使用している。

伊賀の風景が作品のイメージにつながることもあるという田槙さん。「いつも次はどんな作品をつくろうかと考えています。伊賀の山を見て、あんな色で描いてみようと思うことも。作品のイメージを考えるのも好きですが、実は貼り絵など、黙々と制作する過程も好きなんです」と語る。

ほかにも、今年の6月には伊賀市文化都市協会が市内の保育園や幼稚園などに無料配布した、CD付きのクラシックの絵本『知らない森のお月さま』では、イラストと文章、選曲を担当。男の子やおじいさん、森の動物のやさしさを綴った心温まるストーリーとシューマンのピアノのコラボが好評だ。

ご縁を大切に 伊賀に住み続けているからこそ生み出せる作品がある

CD付きのクラシックの絵本『知らない森のお月さま』

CD付きのクラシックの絵本『知らない森のお月さま』
※『知らない森のお月さま』は、伊賀市文化都市協会にて、
1000円(税込)で販売中。

都会のスタイリッシュな作品への憧れもあったが、大学では自分は自分にしかできない作品を創ろうと心に決め、制作に励んだ。教授からは「田槙さんの作品は土っぽい。どっしりしている。田舎に住み続けているからこそ、こんな作品が創れるのだろう」という評価を受け、卒業制作の絵本は賞を受賞した。「都会での活動をすすめてくださる方もいますが、ここに住んで、出来る範囲で作品を創って発表し続けられることが、幸せ。いろいろな仕事をいただけるのもここに住んで多くの方とご縁ができたから。支えてくださっている方には、とても感謝しています」と田槙さん。

13年に渡り、島ヶ原で毎年秋に個展を開催しているが、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で開催は未定だという。コロナ禍の中、ここ数か月間、ひたすら制作に励んだという田槙さん。今後の予定はSNSで発信していく予定だ。

※2020年9月13日に伊賀市文化会館で開催される「ぶんとチャイルドクラシックプログラム わんぱくキッズのクラシック探検隊/2歳になるまでのクラシック」の中で、同絵本の読み聞かせが実施されます。
※絵本、イベントの詳細は、伊賀市文化都市協会(TEL:0595-22‐0511)まで

取材日 2020年7月