芭蕉のふるさとの記念館として 幅広い世代に親しまれる場所に 芭蕉翁記念館 学芸員 髙井悠子さん

伊賀人バンザイ!

第5回

芭蕉のふるさとの記念館として 幅広い世代に親しまれる場所に
芭蕉翁記念館 学芸員 髙井悠子さん

芭蕉翁記念館 学芸員 髙井悠子さん

風土から芭蕉が感じられる伊賀は魅力ある場所

 「伊賀は芭蕉がふるさととして住んでいたことが感じられる、ほかにはない魅力ある場所」と話すのは、芭蕉翁記念館の学芸員、髙井悠子さん(35)。出身は芭蕉の墓所のある大津の義仲寺の近く。立命館大学大学院で日本文学専修博士課程を修了後、教員を経て、2016年から岐阜県大垣市の「奥の細道むすびの地記念館」で嘱託職員として学芸員を2年勤めた。芭蕉翁記念館が2018年4月から市営になるにあたり、正規の学芸員を募集した際に採用され、着任して2年近くになる。

 以前の職場と違って驚いたことは、報道機関や各種団体、個人などからの問い合わせが多いことだという。「やはり、ここが歴史ある芭蕉のふるさとの記念館ということだからでしょう。伊賀の知名度の高さを実感しています」と髙井さん。伊賀の印象については「当時から残る町名や街並み、処女作『貝おほひ』を奉納した菅原神社など当時を偲ぶことができる史跡が多く残り、ゆかりの方々もいらっしゃいます。芭蕉が暮らしていた事を肌で感じられ、芭蕉の人物像についてより探求できる場所だと、改めて実感しています」と語る。

多岐にわたる学芸員の仕事 市内の学校で出前授業を実施

風土から芭蕉が感じられる伊賀は魅力ある場所

和室で調べ物をする髙井さん
「貴重な資料に直接触れられるのも学芸員の魅力です」と話す

 美術館・博物館の専門職として知られる学芸員。資料の収集・保管・調査・研究以外にも展示会の企画や講演会の開催、来館者や他機関への対応など、仕事は多岐にわたる。同館では、芭蕉の真筆を約20点、版本、軸物、書状などのほかに、門人関係や郷土の資料などを約3000点以上も所蔵している。年に4回、企画展を実施していて、そのうち芭蕉祭(例年10月12日)の時期には自館とともに他館の資料も展示する特別展を実施。令和元年度は『奥の細道』330周年を記念し、芭蕉の自筆本『奥の細道』(個人蔵)を伊賀で約20年ぶりに展示した。

 企画展の会期中は、より深く展示内容を知ってもらおうと展示の解説を踏まえたギャラリートークなども開催。地元の方に対しても来館を呼び掛け、チラシを回覧板等で案内するなどしている。

企画展のギャラリートークの様子

企画展のギャラリートークの様子

 髙井さんは地元の子どもたちに「伊賀でしか感じられない芭蕉の姿を伝えたい」と、地元の学校の見学の受け入れや学校に出向いて講演する出前授業なども実施。出前授業では、地元で詠まれた俳句などを盛り込んだカルタを作成したり、もう一人の学芸員を芭蕉の旅姿に扮して登場させるなど、親しんでもらえる内容にするよう心がけている。「芭蕉は素晴らしい才能の持ち主ですが『奥の細道』を何度も推敲するなど、大変な努力家だったとも思っています。その俳句が詠まれた背景や門人さんとの関わり、人物像がわかるエピソードを伝えることで、芭蕉という人間に興味を持ってもらいたい。そして、人間の営みの中ですばらしい作品を生み出した芭蕉の偉大さを感じてもらいたいです」と話す。

専門機関としてすべての世代に芭蕉の魅力をとどけられる施設に

専門機関としてすべての世代に芭蕉の魅力をとどけられる施設に

令和元年度「奥の細道」のハンズオン展示
「奥の細道」で詠まれた俳句を地図に置くもので、学芸員実習生と作成
※展示内容は時期により異なります

 「全国から俳句をされている方が本館にお越しくださいます。そういった方に喜んでいただけるよう、常に芭蕉の真筆を展示するようにしています」と髙井さん。この施設はそういった専門機関としての役割を担う一方で、社会教育施設として未就学児から年配の方まで、幅広い年齢層に親しんでもらえる施設にしたいとも考えている。「長い歴史の中で大切に守られてきた大いなる遺産を次の世代に引き継いでいかなければなりません。それには、子ども達にもっと興味をもってもらえる施設にしなければ」と同館に対する熱い思いを語る。着任してから手で触って親しんでもらえる「ハンズオン展示」を学芸員志望の大学生と作成したり、芭蕉の旅姿の衣装体験コーナーを設けたり、夏休みには絵入りの説明文をつけるなど、子どもたちに親しんでもらえるよう工夫を凝らしてきた。

 その話しぶりから仕事への情熱が伝わってくる髙井さん。最後に今後の夢を聞くと「新しい記念館を建てて欲しいですね。もしそうなったら、専門的な機関としての役割を果たしながら、これまでの概念にとらわれない、地域に馴染める、子どもたちや若い世代の方も楽しんでもらえる、工夫を凝らした記念館にしたいです」と目を輝かせながら語ってくれた。

芭蕉翁記念館

芭蕉翁記念館外観

所在地:三重県伊賀市上野丸之内117-13(上野公園内)
開館時間:8:30〜17:00(受付終了16:30)
※年末年始、展示物の入替、書庫くん蒸等のため臨時休館の場合あり
入館料:大人(大学生以上):300円(団体:200円)
小中高生:100円(団体:60円)
※団体割引は20名以上
※未就学児:無料
※障がい者手帳をお持ちの方:無料

問合せ:0595-21-2219

芭蕉翁記念館内観

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