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忍者の聖地 伊賀

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第30回 中世城館での実践

三重大学人文学部 教授 山田 雄司

忍者が日々どのような修行を行っていたのか、このことについては、忍術書にはほとんど記載がないのでよくわからない。また、身体的側面についての記載もほとんどない。そのため、忍術を研究するにあたって、紙に書かれていることだけでわかったと思うのは間違いで、重要な部分は「口伝」とか「口占」とだけ書かれていて、省略されている場合が多いので気をつけなければならない。

三重大学人文社会科学研究科では2018年より忍者研究のコースを設けているが、今年から「忍者学実践特講」という授業科目を設け、伊賀で実践的取り組みを開始した。第1回目は久松眞名誉教授に伊賀研究拠点において、忍者の携帯食である兵糧丸づくりを指導していただき、第2・3回目は忍術を継承している甲賀流伴党21代目宗家川上仁一先生に、阿山の中山城跡において、忍者の体の使い方について大学院生に指導していただいた。

中山城跡で大学院生を指導する川上仁一氏

川上先生が室内で体の使い方について示されるのは、私はこれまで何度となく目にしているが、屋外での動きを目にするのは初めてで、今回の山中での動きは室内のそれとは全く異なり、驚異の連続だった。まずは基本である呼吸法や九字護身法から始まる。これも木が吸い上げる水の気を感じる修行もあることを初めて知った。次いで、走法、転身、受身と進んでいくが、室内で行うのとは全く条件が異なる。ウサギや亀になって草むらの中を歩いたり這ったりしていくのは相当な困難が伴う。また、木や草が茂っているので、転身をすることによってタイミングや方向をずらし、相手の意表を突いて逃げることができるのがよくわかった。受身にしても、柔道の受身とは異なり、手を地面に打ちつけたりせずに横に転がるのは実践的である。

そして、指を突き刺したり苦無や縄を用いての斜面の登り降り、闇夜を意識した歩き方、縄の縛り方や張り方、そして縄を伝っていく方法など、およそこれまで見たことのない技ばかりだった。頭ではわかっていても、実際に行うとできないことも多い。また、忍術書に書かれていることがすべて正しいわけではないこともわかった。なかなか思いどおりの動きができず、はじめ院生は戸惑いを見せていたものの、次第に上達し、山の中でなければ体験できない実技を習得していった。最後には山城内にどのように侵入するか、自分の頭で考えて集団で行動する方法など、どれも忍者に必要な実践的な内容を2回に分けて体験した。

指導していただいた川上仁一先生は、もうすぐ古稀を迎えられるが、とてもそのような歳には見えず、次から次へと身をもって技を披露されるのは驚異的だった。幼少のころ師から実践的な技を伝授されて身につけ、現在でも行うことができるのは驚き以外何ものでもない。忍術書を読んでいるだけでは決してわからない忍術の側面について今回教えていただいたのは、大変貴重な体験だった。院生も、体育専攻であるわけではないので、かなりハードな内容で体力的に厳しいところもあっただろうが、外でなければわからない忍術を肌で感じることができたと大変満足していた。来年度以降も「忍者の聖地 伊賀」において、実践的な取り組みを続けていこうと思う。

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