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第6回 『忍者はすごかった‒忍術書81の謎を解く‒』

三重大学人文学部 教授 山田 雄司

このたび幻冬舎新書として、『忍者はすごかった‒忍術書81の謎を解く‒』という本を出版した。本書のカバーには、私の書いた本文をもとに編集者の方がまとめた文章が書かれている。

黒装束で素早く動き、手裏剣で敵を撃退する……忍者に対するそんなイメージは、すべてフィクションだった!「忍者」という呼び名自体が昭和三十年代に小説などを通じて定着したもので、歴史的には「忍び」と呼ばれた。最も大事な使命は、敵方の情報を主君に伝えるため必ず生きて帰ること、敵城に忍び込んで情報を得ることはもちろん、日中は僧侶や旅人に化けて話しを聞き出していた。「酒、淫乱、博打で敵を利用せよ」「人の心の縛り方」など忍術書の八十一の教えから、忍者の本当の姿を克明に浮かび上がらせる。

山田雄司著『忍者はすごかった』(幻冬舎新書)

カバーに何が書いてあるかで本を手に取ってもらえるかどうかが決まるので、なかなか刺激的な文章となっている。本のタイトルも、私は『忍者からの伝言』、『忍者から現代を生きる人のために』といったものを提案したのだが、編集部からは『忍者はすごかった』という書名でいきたいということだったので、そのようになった。

内容については、本書を読んでいただきたいが、忍術書から現代人にも役立つ心構えなどを抜き出し、現代語訳を施して、解説を加えたものである。本書を書いているときに、現代人に役立つ「忍術」がとても多いことに改めて感じ入った次第である。
「おわりに」の部分には本書のまとめを書き記したので、以下に掲載することとする。

忍びの道は長く険しいものです。忍びの職務は危険と常に直面していたので、常にそれを意識して修行に励む必要がありました。そしてその結果、人の想像を超えた「神秘奇特」で「奇怪不思議」な術を身につけることができました。

忍びの修行は肉体的側面だけでなく、精神的な側面も非常に大切であり、さまざまな素養を身につける必要がありました。そして、単なる技術の習得ではなく、哲学的思考力も持っていなければ、相手の心理を読みとって忍びの仕事を完遂することはできません。

虚実とりまぜて人の心の中に入り込む忍者は、あらゆる方向の知識を持って、さらにそれを実践する能力がなければ、決して成り立たない職だったのです。江戸時代の忍術使いの記録を見てみると、手足の関節を自由にはずしたりはめたりして狭いところでも抜けたり、猿のように木から木へ飛び移ったり、ずっと潜水したりしている様子が描かれています。そして、普通の人でも一日六十キロメートル以上歩いたり、六十キログラムの米俵を持ち上げることができました。五感の能力も現代人よりずっと優れていたことも容易に想像できます。

そうした人間が本来持っている能力がどんどん失われ、現代人は便利な道具に頼らなければ暮らしていけなくなってしまいました。しかし、逆に考えれば、損なわれた能力を鍛えていけば、さまざまな能力を再び獲得していくことができるとも言えるわけです。

本書は忍術書から現代人にも役立つと思われる部分を抜き出して、私なりの観点から解説を加えました。忍者の置かれていた環境と、現代の環境とでは大きく
異なりますが、その中には現代人にも役立つ知恵が詰め込まれています。
忍者に学び、私たちが本来持っている能力を呼び覚まし、ぜひ毎日の生活に役立てていただけましたら幸甚です。

今までにはない忍者本となっているはずなので、本書を通じて「忍術」の奥深さを味わっていただき、日々の生活に活かしていただけたなら幸甚である。

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